猫が威嚇するのは?ポーズやなつかない場合の対処法も

「お迎えした猫が威嚇ばかりしてなつかない…」そんなお悩みを抱えた飼い主さんはいませんか?

実は猫の威嚇にはさまざまな理由が隠されているのです。その理由を知ることで、愛猫との距離をグッと近付くことができるかもしれません。

ここでは、猫が威嚇する理由から対処法まで詳しくご紹介します。

猫が威嚇する理由とは?

猫の威嚇

あなたは飼い猫に威嚇されたことはありませんか。

突然牙をむきながら「フーッ!」「シャーッ!!」と唸り声を上げ、威嚇のポーズをされると「なんで?」「なにかした?」と、戸惑ってしまう方も多いのではないでしょうか。

また威嚇される度に「なついてくれない」と不安になってしまう方も多いことでしょう。

では、なぜ猫は威嚇をするのでしょうか。それにはさまざまな理由が考えられます。

敵意・恐怖心を抱いているから

「シャー!」や「ケケケッ」といった唸り声ではなく、「アーオ!」と高らかに鳴く場合は強い恐怖を感じている証拠です。

猫は、その場から逃げることができないと判断したとき、自らを守るためにこのような威嚇行動をとるのです。このことを『恐怖性/防御性攻撃行動』と呼びます。

恐怖心の強い猫は威嚇することで、なんとか危機から逃れようとしているのです。また、ニオイに対して不快を感じたときにも同様に唸ることがあります。

縄張り意識から

猫は、縄張り(テリトリー)の中を自分が生活する拠点としています。その範囲は、約0.07~0.28km²とされ、縄張りに侵入してきた者がいれば強い警戒態勢に入ります。

このことを『縄張り性攻撃行動』と呼び、引っかいたり噛みついたりなどして威嚇行動を取るのです。

猫特有の体臭に包まれた縄張りは、猫にとってホッと安らげる大切な場所でもあります。この場所が他者に奪われそうになったり、なくなったりすると、不安を感じて威嚇行動を取ってしまうことがあるのです。

ストレスなどによる行動から

自らの欲求が満たされず、ストレスが溜まると威嚇行動を取ることがあります。このことを『転嫁性攻撃行動』と呼びます。

転嫁性攻撃行動とは、ストレスのはけ口を第三者に向けて発散させようという行動のことを指します。要は「八つ当たり」です。

この行動が頻繁に続く場合は、ストレスを抱えている証拠です。ストレスを溜め込まないためにも、猫が安心してくつろげる場所を用意したり、複数の爪とぎを愛猫の好む場所に設置してあげたりするとよいでしょう。

しつこく触られたことに対する不快感から

愛猫を撫でていたら、突然噛まれたことはありませんか。

猫は気まぐれで自由奔放な動物ですから、過剰なスキンシップは「しつこい」と感じてしまい、攻撃体勢に入ってしまうのです。

これは『愛撫誘発性攻撃行動』といいます。

原因としては「撫でるのが長い!」「撫でるのが下手」「触って欲しくない場所を触られた」などさまざまな理由が考えられるそうですが、明確なことは分かっていません。

しかし、猫は攻撃する前にあるサインを出します。尻尾を振ったり、耳をたたんだりしたらそれは嫌がっている証拠。そのような行動が見られたら、スキンシップを取るのは止めましょう。

自分のものを取られそうになったから

猫がおもちゃや食べ物を咥えて威嚇する行動は、横取りされたくない気持ちからです。このことを『捕食性攻撃行動』と呼び、獲物に対し条件反射的に行われると考えられています。

また類似して『遊戯性攻撃行動』というものがあります。この行動は、遊びの延長で見られる噛みつきや引っかきのことを指します。

妊娠中や産後だったから

私たち人間の場合、妊娠中や産後に動物的な本能から子どもを守ろうと攻撃的になる時期があります。

それは猫も同じで、妊娠中や産後などの威嚇行動は『母性攻撃行動』といい、その行動は自然と出るものなのです。

もしも母猫から子猫を引き離そうとすれば、攻撃をされる可能性が高いといえるでしょう。

ケガや病気をしているから

猫の威嚇行動には、痛みが原因で起こる『疼痛性攻撃行動』というものがあります。

疼痛(とうつう)とは医学用語で「痛み」のことを指し、じっとしていてもズキズキと痛む痛さを表しています。

例えば猫の場合、尻尾を踏まれた、叩かれたなどの突発的なものから、胃腸炎や関節炎など持続的な痛みが含まれます。

威嚇するときのポーズや鳴き声は

ここでは、猫の威嚇するときの特徴や仕草などについて見ていきましょう。

威嚇するときのポーズ①「体勢」

頭を低くして背中を丸め、背中の毛を逆立てるポーズがあります。

これは、相手に自分の体を大きく見せようとしていること、そして防衛の姿勢を取るためといわれています。

威嚇するときのポーズ②「耳」

耳を後ろに反らせ威嚇するときは、2つの理由が考えられます。

猫に対して
同居猫や野良猫に対して「これ以上近寄ると攻撃するぞ!」と怒りをアピールしています。
人に対して
自分に近寄ろうとする人間に「近寄らないで!」と拒否を示しています。

また怒りがヒートアップすればするほど、耳の反り具合も強くなる傾向にあるそうです。

威嚇するときのポーズ③「尻尾」

尻尾の根元が上がり、先が垂れている状態は「もう我慢ならない!攻撃するぞ!」というサインです。

これは猫同士がケンカをしたとき、優位に立っている猫側がすることが多いそうです。

さらに体を大きく見せることができるため、威嚇するときなどは尻尾をブラシのように大きく膨らませ、左右に激しく振ることがあります。

また恐怖心から尻尾をお腹の下に入れたり、背中を丸めたりすることも。

威嚇するときの表情

猫が怒っているかの判断は「目」「口元」「ヒゲ」を見ればわかります。

猫は身の危険を感じると、瞳孔が一瞬にして広がります。そして威嚇する対象に照準を定め、黒目が細くなります。
口元
口角を上げて牙(犬歯)を出します。そして相手を威嚇するため鳴くことも。
怒りの度合いが低いときは、口を開かないこともあるそうです。
ヒゲ
怒りで顔の表情筋が強張ると、ヒゲの付け根に強い力が入ります。
口を開けて威嚇することがあるので、ヒゲは顔の後方や斜め上に反ります。

また猫の怒りには「攻撃的」「防御的」の2種類が存在します。

攻撃性が強いときは瞳孔が細く、耳は外向きに。防御性が強いときは瞳孔が開きがちで耳を伏せ、声で威嚇するために口を開ける傾向にあります。

威嚇するときの鳴き声

猫の鳴き声は16種類以上あるといわれ、その中で威嚇するときの鳴き声は大きく分けて3つあります。

毛を逆立て「シャー」「フーッ」「グゥゥゥゥ」
威嚇や拒絶の気持ちを表しています。
「シャー」という鳴き声は、猫がヘビを真似たものだといわれています。
甲高い声で「アオー」「ウワーオ」
恐怖でパニック状態に陥っているときといわれています。
低い唸り声で「ウーウー」「ヴャ」
相手を敵対視しているときに鳴く声。

ちなみに、野生の猫が声でコミュニケーションを取るのは、怒ったときのみといわれています。

なつかせるためには?

猫が威嚇する理由は、怒りや恐怖の表れだということがわかりました。

ではどうすれば、猫はなついてくれるのでしょうか。

音や声に注意する

猫の可聴範囲は30~6.6万ヘルツといわれ、犬の可聴範囲(15~5万ヘルツ)の約2倍といわれています。つまり、犬よりも猫の方が物音に敏感なのです。

そのため力強くドアを閉める音や、大声を出されるのは猫にとって迷惑極まりない行為といえます。さらに電子音や機械音も苦手な猫も多いため、音量には十分気を付けてあげましょう。

また猫によって、男性の低い声をあまり好みません。その理由は、猫にとって男性の低い声は「威嚇しているのでは?」「怖い」と感じてしまうから。

猫に話しかけるときは、なるべく高め声でゆっくり優しいトーンを心掛けるようにしましょう。

ニオイに注意する

猫の嗅覚は非常に鋭いといわれ、私たち人間の約数万倍~数十万倍もあるそうです。

そのため、人間でも刺激の強いニオイは、猫にとってかなりきついニオイだといえるでしょう。例えばタバコや香水、メントールの香りがする湿布や消毒液などは大の苦手です。

猫にとって嗅覚は命の次に大事な感覚といわれていますので、ニオイの強いものはなるべく避けてあげるようにしてくださいね。

近づいてくるのを待つ

「猫と仲良くしたい!」「コミュニケーションを取りたい」と積極的に近寄るのは止めましょう。

猫は自分の都合で行動することが多いため、突然行動を阻止されるのを嫌います。

なかには人なつっこい猫もいますが、そうでない場合は仲良くなりたい気持ちをグッと押さえ、向こうから近づいてくるまで気長に待つようにしてください。

また頭や手足をいきなり触られるのを嫌がる猫もいます。猫が近寄ってきたら、まずは猫に身を委ねて様子をみましょう。

そして慣れてきたら首や背中などを触り、徐々にコミュニケーションを取っていくことをおすすめします。

ごはん・おやつを利用してみる

猫はごはんやおやつをくれる人の顔をすぐに覚えます。
そのため猫の大好物でご機嫌を取れば、距離はグッと縮まるかもしれません。

ただ、おやつのあげ過ぎは肥満の原因にも繋がりますので、あげる分量を決めて与えるようにしてくださいね。

パーソナルスペースを把握する

猫は人に対し「ここまでなら近付いてもいいよ」「これ以上は近付いてほしくない」といった感覚を持ち合わせているそうです。

例えば飼い主を信頼している猫の場合、パーソナルスペースは約50cm~1.5mとかなり近い距離です。しかし飼い主に慣れていない猫の場合、すぐに逃げられる2mほどの距離を保とうとします。

そのためまずは1.5~2mくらいの距離を保ちながら、少しずつ距離を縮めていくとよいでしょう。

もちろん、猫によって快適な距離は異なります。様子を見ながらパーソナルスペースを意識してあげることが大切です。

威嚇された状況別の対処法

猫が威嚇してきたら、まずはその原因や状況ごとに対処することが大切です。間違った方法で対処すると、思わぬケガや猫との関係性に亀裂が入る恐れがあります。

よりよい関係を築いていくためにも、状況別に対処法を見ていきましょう。

多頭飼いしている場合

多頭飼いしているご家庭の場合、突然猫同士がケンカをしたり、威嚇したりすることがあります。

このとき、飼い主さんが「ケンカしちゃダメよ」と間に入るのは絶対に止めましょう。下手に手を出すと、攻撃されケガをする場合があります。

猫同士の主なケンカは縄張りの侵害などが考えられます。どうしても威嚇行動が収まらない場合は別々の部屋で過ごしてもらうようにし、猫たちの行動を観察してください。

スキンシップ中に威嚇された場合

猫と一緒に遊んでいるときや、ブラッシングをしているときなどに突然威嚇されたら、まずはその嫌がっている行為を中断してください。そして猫から目線をそらし、無視の姿勢をとるようにしましょう。

威嚇している猫と目を合わせるのは、ケンカを始める合図と同じです。興奮状態をヒートアップさせないためにも、猫が落ち着くまでその場から離れていましょう。

赤ちゃんや子どもに威嚇した場合

猫にとって赤ちゃんや子どもは、動きが読めない未知なる生物。

突然大きな声を出したり、追いかけてきたりと、猫にとっては恐怖のなにものでもありません。

そのため猫が威嚇を始めたらすぐに、赤ちゃんや子どもを猫から離すようにしましょう。

まとめ

猫が威嚇するのは、必ず理由があります。

ストレス、不安、恐怖、体調不良などそれぞれの原因によって対処法が違います。そのためまずは、何が理由で威嚇しているのか見極めることが大切です。

ただし常に激しい威嚇をする場合は、専門家による治療が必要になる場合があります。かかりつけの動物病院や猫の行動専門家などに相談をすることをおすすめします。

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