原産国タイでは王室や貴族、寺院などで古くから愛されてきた猫種です。その美しいV字型の小顔に、長く細い美しいしっぽはまさに高貴な猫といえるでしょう。
第二次世界大戦の頃は一時、存続の危機の陥りましたが、今では誰もが知る猫種として今日に至ります。
ここではそんな、純粋種の代表格としても名高いシャム猫の性格から特徴、毛色や飼い方などについて詳しく解説していきます。
シャム猫(サイアミーズ)の性格や特徴について
元々シャム猫はタイが原産の猫種。かつてタイは“サイアム”という国名であり、日本では『暹羅(シャム)』、海外では『サイアミーズ』と呼ばれていました。
ちなみにタイではシャム猫のことを、月のダイヤモンドを意味する『ウィチアン・マート』と呼ばれているそうですよ。とても神秘的でエレガントな呼び名ですね。
ここではそんな優美で気品漂うシャム猫の性格や特徴について見ていきましょう。
人懐っこくてかわいい
タイは、日本から直線距離で約4,600km、飛行機で約6時間ほどの場所にあります。高温多湿で年中蒸し暑く、日本でいうと年中7~8月の気温といってよいでしょう。
そんな気候で生活をしていたこともあってか、シャム猫は短毛で比較的寒がりの猫種です。そのため人と触れ合うことが大好きで、飼い主さんのひざなどに乗ってぬくもりを感じていたい猫でもあります。
また飼い主に対して愛情深く、甘えん坊な性格の持ち主。長い時間のお留守番を苦手とするため、猫とたくさんコミュニケーションを取りたい方におすすめの猫種です。
おしゃべりで話し上手?
見た目は優雅で気品漂うイメージですが、実は「おしゃべりキャット」とあだ名が付くほどよく鳴く猫種でもあります。
なぜよく鳴くのかというと、要求や飼い主さんとのコミュニケーションを取りため。つまり承認欲求が高く、寂しがり屋な性格をしているから。
そのため、静かな環境で過ごしたい方にはあまり向いていない猫種ともいえます。逆に、お世話を焼きたい人やできるだけ愛猫接したい人にとっては相性が良いでしょう。
見た目はクールなのに、おしゃべりというギャップは、愛猫家にとって溜まらなく愛しい存在ですね。
すらっとした特徴的な体型
シャム猫は、くさび形の頭に細くしなやかな胴、そして長い四肢とムチのような長いしっぽが特徴の『オリエンタルタイプ』と呼ばれるボディタイプに分類されます。
全身に程よい弾力と筋肉質な体つきは、まるでアスリートのように美しい体型です。手足や体が細長く、耳は顔に対し大きめの三角形はシャム猫ならではといってよいでしょう。
体型は2タイプ
シャム猫は「モダンスタイル」と「トラッドスタイル」という体型の違いがあります。
・耳が大きく離れ気味
・モダンスタイルより耳は大きくない
一般的によく見かけるシャム猫の多くは「モダンスタイル」と呼ばれるV字型(逆三角形)の顔立ちとスレンダーな体型をしています。
ちなみに現在見かけるモダンスタイルのシャム猫は、オールドスタイルのシャム猫を品種改良している個体が多いようです。
シャム猫(サイアミーズ)の毛色や模様の種類は?
シャム猫といえばクリーム色をベースに、顔まわりに濃い毛色が覆われているイメージを持たれる方が多いと思います。
この顔まわりの濃い毛色はポイントカラーと呼び、部分的にカラーが入ることを意味します。シャム猫の場合、顔まわり以外にも両耳、四肢、しっぽ、睾丸など約9か所に色が付き、以下の4色に分類されるといわれています。
- 体に薄いクリームの黒みがかった茶色が入る「シール・ポイント」
- クリーム色をさらに薄くしたような色をベースにミルクチョコレート色が入る「チョコレート・ポイント」
- 青みが入ったホワイトに、灰色がかかった青色が入る「ブルー・ポイント」
- ブルーポイントよりも薄い灰色が入る「ライラック・ポイント」
また年齢と共に、シールポイントやブルーポイントは胴まわりにうっすら陰(シェード)が入る場合もあるそうです。
シャム猫の被毛の特徴
短毛種のシャム猫は比較的お手入れのしやすい毛質をしています。「クロースライイング」と呼ばれる体にぴったりと密着して生える被毛は、きめ細かで絹のような光沢があり、シャム猫の美しいビジュアルを作り出しています。
またシャム猫の被毛は、トップコートのみのシングルコートなため、保温性がなく寒がりな子が多いのも特徴。シャム猫を飼ったら室内の温度管理を十分に注意してあげることが大切です。
シャム猫の毛色は変化する?温度が低い時は黒くなる?
シャム猫は「サイアミーズ遺伝子(白化遺伝子)」と呼ばれる色素をコントロールする遺伝子を持ちます。
そのため温度が低い耳、口元、手足、しっぽにはそのサイアミーズ遺伝子が働かないため、濃い毛色となってポイント柄になります。また体温の高いところはサイアミーズ遺伝子が働くため白くなるそうです。
生まれたばかりのシャムの子猫が全身クリーム色をしているのは、体温が高くサイアミーズ遺伝子が働いているからだそうですよ。
シャム猫(サイアミーズ)の体重や大きさ(体長)は?
利口で遊び好きなシャム猫。暖かい場所が大好きなので、家の中ではいつも快適で暖かい場所を見つけては昼寝をしています。
そんなシャム猫は、成猫の標準体重が約2.5~4.5kgとされており、一般的な猫の平均体重(3.5~4.5kg)と比較すると若干軽いとされています。
性別での体重を見てみると、オスのシャムは体重約3~4kg、メスのシャムで体重約2~4kgとのこと。また平均体長が約25~27cmとされ、一般的な猫の体長(23~25cm)とさほど変わらないといえるでしょう。
シャム猫(サイアミーズ)の飼い方について注意したいこと
活動的でいつも元気なシャム猫。猫の中でも運動量が多い猫種とされており、高いところに登ったり散歩をしたりすることを好みます。
またいたずら好きな一面もあるため、飼い主さんの反応を見ては壁を引っかいたり、物を落としたりするので気長にしつけをする必要があります。
そんなシャム猫をもしも飼う場合、注意すべき点や気を付けるべき点はあるのでしょうか。
体を動かせる環境を用意する
運動量が多く元気なシャム猫は、日常的に思いっきり体を動かせる環境を用意することが必須になってきます。
そのためなるべく広いスペースを確保すること、そしてキャットタワーなどを設置してたくさん体を動かせる工夫づくりに努めるようにしましょう。
またなによりも飼い主さんとコミュニケーションを取るのが大好きな猫種でもありますので、毎日最低でも5~10分程度は一緒に遊ぶ時間を確保するようにしてくださいね。
早食いを抑えるために粒が大きめのフードがおすすめ
スレンダーな体型の割には、筋肉質なシャム猫。その体型を維持していくためには動物性たんぱく質が摂れるキャットフードを選んであげることが大切です。
また炭水化物を摂りすぎると消化機能の低下にも繋がります。そのため、できれば高たんぱく質・低たんぱく質のキャットフードを選んであげるとよいでしょう。
さらにフード選びの他にも、シャム猫には気を付けるポイントがあります。
シャム猫はV字型の逆三角形の顔立ちをしていることから、早食いの傾向にあるようです。早食いをすると、吐き戻したり、フードを詰まらせたりするリスクが高まります。早食いが慢性化すると満腹感を感じにくく、常にごはんを欲しがるようになりますので、肥満の原因にも繋がります。
もちろん、個体差があるため一概にはいえませんが、早食いの傾向が少しでもあるのであれば、粒の大きめなフードを選んであげるとよく噛んで食べてくれるのでおすすめです。
ブラッシングは週に2~3回を目安に
シャム猫は短毛種のため、お手入れに対して神経質になる必要はありませんが、美しい毛並みを保つためにも小まめなブラッシングは欠かせません。
週2~3回を目安にやさしく撫でるように獣毛ブラシで軽くブラッシングをしてあげてください。忙しい時は手で撫でるだけでも構いません。換毛期になったらラバーブラシで抜け毛を取り除き、獣毛ブラシで全身をブラッシングしてあげるとよいでしょう。
また乾燥する秋~冬の時期は静電気が起きやすいので、ブラッシングスプレーを使いながらブラッシングすると静電気を抑える効果が期待できますのでおすすめです。
シャム猫とのミックス「シャムミックス」って?
シャムミックスとは、シャムと他の血統書を交配させた猫のことを指します。では、ミックス猫(ミックスキャット)との違いはなんなのでしょうか。
ミックス猫とは、2種類以上の猫を掛け合わせた猫のことを指し、さまざまな猫の血が混ざっている個体のことをいいます。
一方シャムミックスは、CFAを始めとする猫の登録団体に登録されているメジャーな品種から個体数の少ない珍しい品種までさまざま存在します。
では、品種が確立されたシャムミックスとはどのような猫種なのでしょうか。
オイイーボブ
シャム猫とマンクスを交配して生まれた猫。1990年代の後半に新種改良された新しい猫種です。
短毛と長毛の個体がおり、共にポイントとブルーの目が特徴的。性格はとても賢く、飼い主さんに対して忠誠心が強い猫種でもあります。
オリエンタル
シャム猫にアビシニアン、アメリカンショートヘア、ロシアンブルーと交配を重ねて生まれました。
スリムでスラっとした体つきに大きな耳が特徴。短毛と長毛がいますが、元は短毛のみ。長毛は突然変異の変種とされています。
性格はシャム猫の気質を受け継いでることもあって、とても甘えん坊で人懐っこい猫でもあります。
オリエンタルバイカラー
シャム猫と白地に他のカラーが混ざったバイカラーのアメリカンショートヘアを交配させ、さらにシャム猫またはオリエンタルと交配させて生まれました。
また白い斑点を作り出す遺伝子を持ち合わせます。
性格は、遊ぶことが大好きな活発。猫らしくツンデレで自由気ままに行動する傾向に強いといえるでしょう。
カラーポイントショートヘアー
シャム猫とアメリカンショートヘアなどから交配して生まれました。
シャム猫の容姿を引き継ぎいでいますが、ポイントカラーはシャム猫を上回る16色のポイントカラーが認可されています。
性格は人懐っこく、遊び好き。特に人と遊ぶことが好きですので、一緒に遊んであげると大変喜びます。しかし一方で、神経質で嫉妬深いところもあるため、ストレスを与えないようにする必要があります。
ジャバニーズ
カラーポイントショートヘアから生まれた長毛種の猫です。他の長毛種の猫に比べて短毛なところが特徴です。また抜け毛はあまりないため、お手入れは比較的楽な猫といえるでしょう。
性格はやさしく穏やかな。素直で飼い主さんに対して従順です。とても賢く、しつけもしやすい猫でもあるので、初めて猫を飼う方にもおすすめです。
スノーシュー
足の先が白いシャム猫とアメリカンショートヘアを交配して生まれました。またスノーシューの特徴的なソックス模様は、劣勢遺伝のためかなり珍しい品種でもあります。
性格は甘えん坊で遊び好き。シャム猫の面影を残しています。人見知りすることなく、誰に対しても積極的に近寄ってきますが、飼い主さんに対する想いは誰よりも強く、いつもそばにいたいと思っているようです。
バーマン
1920年頃にミャンマー原産の猫をフランスで交配した生まれました。
まるでソックスを履いているような前肢の白い模様は「グローブ」、後肢の白い模様は「レース」と呼ばれています。また神秘的なブルーの瞳も印象的で「ビルマの聖猫」とも呼ばれており、神秘的な伝説が残る猫でもあります。
性格はフレンドリーで愛らしく、家族と過ごすことが大好きな猫です。小さい子どもや他のペットとも仲良くできるので、多頭飼いもしやすい猫種といえるでしょう。
バーミーズ
ミャンマーにあるビルマ寺院で飼われていた「ウォンマウ」という茶色の猫と、シャム猫を交配して生まれた猫の原型がバーミーズといわれています。また、名前の由来はバーミーズの葉巻からとったものとされています。
全体的に丸いフォルムなバーミーズは、小さい体でありながら筋肉質でがたいのよい体型でもあります。さらに大きくてまん丸な目は少し離れていたり、鼻にはくっきりとブレイク(鼻筋が途中でくぼんでいること)があったりするのもチャームポイントといえるでしょう。
性格は、とても楽天的で社交性にも優れており「話上手な猫」といわれるほど、元気いっぱいで愛らしい猫種です。
バリニーズ
シャム猫の長毛種とされる「バリニーズ」。シャム猫と同じ4種類のポイントカラーの毛色を持ちます。
顔はくさび型で骨格が細く、すらりとした体型が印象的ですが、体は筋肉質で引き締っているのが特徴的です。
性格はとても甘えん坊で人懐っこく、誰とでも仲良くなれる友好的な猫といえるでしょう。
ヒマラヤン
シャム猫とペルシャを交配して生まれた「ヒマラヤン」。1つの品種として扱われていますが、ペルシャのカラーバリエーションの1つとして多くの猫協会等で位置付けされています。
また豪華な被毛はふわふわで滑らかな手触り、そして首まわりの飾り毛が特徴的です。
性格はペルシャより。物静かでのんびりと過ごすことを好みますが、他のカラータイプのペルシャと比べ社交性が高く、人懐っこい性格をしています。子どもや他のペットとも仲良くできる性格なので、多頭飼いにもおすすめです。
メコンボブテイル
メコンボブテイルのルーツは明確にされていませんが、一説ではシャム猫とボブテイルが祖先になっているのではないかと考えられています。
またイランやイラク、中国、ベトナム、ミャンマー、モンゴル、ラオスなどからロシアの有名な俳優であるMichael Gluzskyjさんが輸入した猫と深く関わっているらしく、そこからメコンボブテイルは誕生したともいわれています。
メコンボブテイルは6~7cmほどしかないお団子のようなキュートなしっぽを持ち、被毛は短め。ポイントカラーで色の種類もいくつかあり、クリーム、シール、シールトーティ、ブルー、レッド、レッドタビーなどのメコンボブテイルがいます。
性格は、非常に活発で遊び好きですが、警戒心は強め。心を許した人間にしか懐かない傾向があります。しかし、慣れてしまえば甘えてくる一面を見せる傾向にありますので、オンリーワンで愛されたい飼い主さんにはおすすめの猫種といえるでしょう。
シャム猫とタイ猫の違いは?同じ猫種?
飼い主さんの中には、自分の愛猫はシャム猫と思っていたが、実はタイ猫だったということがあるようです。
「タイ猫?」と聞くと一見想像できないかと思いますが、実はシャム猫ととてもよく似ている猫種なのです。タイ猫は本来シャム猫をルーツとしており、シャムの中でオールドスタイルと呼ばれる猫に分類されます。
違いとしては、小顔でスレンダーな体型をしているのが「シャム猫」、少し丸みを帯びているのが「タイ猫」と見分けるとよいでしょう。
シャム猫には長毛種がいる?
シャム猫と聞くと、短毛のスラっとした猫を思い浮かべる方も多いかと思いますが、実は長毛のシャム猫も存在します。それが先述でも紹介した「バリニーズ」という猫種です。
アメリカ原産のバリニーズ。誕生のきっかけは諸説あり、一説には1800年代の半ばにアメリカまたはイギリスからタイに持ち込まれたシャム猫が長毛の劣性遺伝子を持っていたのが始まりといわれています。
特徴はシャム猫と同様で、耳、顔、四肢、しっぽにあるポイントカラー、そして細身の体型にブルーの大きな瞳です。シャム猫と唯一違うところを挙げるとすれば、被毛が長く、特にしっぽがふっくらとした厚めの毛に覆われているところでしょう。
鳴き声がとても小さいので、集合住宅や密集地域にお住いのご家庭の方は、近隣住民に迷惑をかけることなく飼うことができるのでおすすめです。
まとめ
多くの猫種のなかでも知名度が高いシャム猫。名前は知っていたけど、実際どのような猫なのか知らなかった方も多いのではないでしょうか。
活発で愛嬌たっぷりな猫であるシャム猫。もしお迎えするのであればキャットタワーや運動ができる環境を用意し、積極的に遊んであげてくださいね。
またシャム猫のスリムで筋肉質な体型を維持するためにも、食事管理には気を付けてあげるようにしましょう。